• 夏の連続サイコミコラム小説
    『TSUYOSHI』協賛企画
    「かーくん、仲間を作ろう!」

  • ※このコラムは(実在の人物、団体とは多少関係ありますが、)フィクションです。

    この物語を、破壊に魅せられたすべての男たちに捧げる……!
  • 登場人物紹介

    組織図


  • ◆◆◆前回までの『かーくん』◆◆◆


    サイコミを作った男・かーくんは傷ついていた。
    元部下に出世レースで追い抜かされたことに?――それもある。
    せっかく体重が減ったのに順調すぎてつまらないと言われたことに?――それもある。
    コラムの取材で仕事が忙しくなってしまったことに?――大いにそれもある。
    だが、それ以上に傷ついたのは……彼が、自らの孤独に気付いてしまったからである。

    かつてショーペンハウアーは言った。「孤独は優れた精神の持ち主の運命である」と。
    しかし、かーくんはショーペンハウアー以上に賢人であった。
    すなわち、仲間を作ったのである。
    かくしてかーくんは新たなる試練に向き合う。
    新たな仲間たちと共に……!








  • 麻生
    「くらえやああああああ!」

  • ※本来はロッカーは破壊対象ではございません。


    それは、ハンマーと呼ぶにはあまりにも武骨すぎた。重く、力強く、そして適当すぎた。


    いきなりのブレブレな写真で申し訳ない。
    麻生の勢いが凄まじく、俺の腕ではとらえきれなかったのである。


    改めて自己紹介をしよう。俺の名前は伊藤和輝。通称・かーくん。
    このマンガアプリ「サイコミ」を立ち上げた人間の一人であり、今はサブマネージャーとして日々アプリの改善に勤しんでいる。


    このコラムを読んでいる皆様はもうご承知おきかもしれないが、小学館から来たコンサルタントである石橋の助言を受け、サイコミの最高責任者『店長』を目指して体を鍛えたり、キャッチコピーを考えたり、その他諸々忙しい日々を送っているところだ。


    さて、我々が本日訪れているのは浅草にある『REEAST ROOM(リーストルーム)』。
    最近、マスコミ各社にも取り上げられている話題の新業態である。
    システムはいたって単純。一定の料金を払うとその部屋にあるものをいくらでも壊していいと言うものだ。
    今回、我々は明確な意図をもってこちらの店舗を訪れたのだが……。



    鍵谷
    「●ねやああああああ!このク●があああああああ!」

  • ああ。またコンクリートが壊れた。
    あの斧みたいなやつ、殺傷能力高いなあ。



    伊藤
    「あの、鍵谷さん? もうちょっと優しく、ね?」


    あべしん
    「どいてください伊藤さん。そいつ●せない」


    伊藤
    「あ、はい」


    ゴルフクラブはさすがに怖いな。


  • その「目的」を果たす前に『REEAST ROOM』さんの面白さを体感しようということで、メンバーに「自由に壊していいよ」と言ったのが間違いだったのだろうか?


    ……全員が、例外なく危険な暴徒と化している……。



    大島
    「ああもう、みなさんはしゃいじゃって……こまりますよねえ? 伊藤さん」


    呆れ声をあげたのは大島である。
    実家が建築関係をやっていて、自身も工事現場の経験がある大島はさすがに落ち着いているなあ。



    伊藤
    「ああ、大島さん。みんなにちょっと言ってやってよ。これじゃ、コラムの取材にならないよ……」


    大島
    「ほんとあんな姿勢じゃ怪我しますよ。ちゃんと腰をいれて、こう」

  • 大島はそう呟くと、斧を振り下ろし、コンクリートを粉々に砕いた。


    伊藤
    「そうじゃない! そうじゃないってば! みんな! ちょっと落ち着いて! ここに来た理由、分かってる!?」


    麻生
    「……ストレス解消のため?」

    鍵谷
    「日頃の恨みを晴らすため!」


    あべしん
    「何だかんだで楽しそうな伊藤さんに天誅を下すため」


    大島
    「取材協力してくださったREEAST ROOMさんの魅力を伝えるために、楽しくて安全な使い方を僕たちが身を持って……」


    伊藤
    「あーもう! 違う違う! みんな違う! っていうか、あべしんやめて! 天誅下さないでよもう! 大島さんもそれ自体は正解だけど俺たちには目的があったでしょ!? リベンジっていう大きな目的が!」


    麻生鍵谷あべしん大島
    「「「「あー(棒)」」」」


    伊藤
    「あーじゃないよ! みんな、思い出してよ! 俺たちは大いなる目的のために集った仲間でしょ!?」


    そうなのだ。今回、俺たちが集まった理由はほかでもない。とある企画のリベンジを果たすためなのである。


    話は約一週間前。前回のコラム終了直後の会議室にさかのぼる……。








    麻生
    「今の伊藤さんとならやれる気がするんですよね。あの企画のリベンジが」


    その企画とは、「ファウルカップがあればツヨシの金的を防げる説」。

  • ご一読いただければわかるのだが、簡単にご説明しよう。
    サイコミで連載中の『TSUYOSHI』というマンガの主人公は、金的で相手を倒す最強の男である。
    彼の必殺技ともいえる金的を防ぐのにはどうしたらいいのか? 
    もしかして実はファウルカップが有用なのでは?
    という検証企画……に見せかけて、色々な絡みがあって検証できなかった……というコラムなのだ。


    その時のことを、石橋は苦虫をかみつぶしたような顔で語る。



    石橋
    「本当に直前で気付いちゃったんですよね。『ファウルカップが壊れなくても人間が壊れちゃう』って……そりゃ、できませんよね。検証」


    そう。我々は本当に馬鹿だったのだ。
    この企画は、段取りや各所への根回し無く成立できるものではなかった。



    石橋
    「それで、葛西編集長に呼び出されまして。『石橋さんがプロデュースした企画なんだから責任取ってくださいね』って言われて、急きょ丸山先生に頭を下げてインタビューをとらせていただくことになったんです……。あの時はさすがの僕も肝が冷えましたよ」


    麻生
    「とりあえず、コラムとしては形になったんですけど……やっぱり俺としては検証できなかったことが悔しかったんですよ。アイデアは完璧だったんで」


    うーむ……そのアイデアが完璧だったかどうかは別として。初志貫徹できなかったことに対する悔しさはすごいよくわかる。俺だってやりきれなかった職務とか企画とかはたくさんあるし、そのことを思い出して眠れない夜っていうのもある。


    伊藤
    「確かに、悔しいっすよね。やろうと思ったことが出来ないって、やっぱり辛い」


    石橋
    「惜しい企画でした。アイデアそのものは悪くなかった。ただ、それ以外に企画に必要な残り二つが欠けていましたね」


    伊藤
    「残り二つ……?」


    石橋
    「アイデア力と同じか、それ以上に大切な要素。それが、『段取り力』と『実行力』です」


    伊藤
    「なるほど。思いついたら、段取りをして、実行しなければならないと」


    そりゃそうだ。


    麻生
    「俺たちは思いつきだけで、それを達成するための段取りも立てていなかったし、実行できるだけの力もなかった。でも、今の俺たちには伊藤さんが……店長がいる。俺たちなら出来ると思うんですよ」


    麻生が俺の肩をがっちりと掴む。


    伊藤
    「……そこまで言われると、悪い気はしないなあ」


    えへへ。まあ、まだ店長ではないけど、店長みたいなもんだしな。


    麻生
    「やりましょうよ! 伊藤店長!」


    伊藤
    「やったろうじゃないの! 麻生さん!」

  • そうして俺たちは、タスクフォースを結成した。


    集まった仲間は5名。


    前回のコラムに関わった麻生・鍵谷・あべしんと、コラム執筆担当だった大島、それから俺である。


    最初に手を付けたのは段取りだ。
    前回のコラムでは社内でファウルカップを壊そうとしたために、管理チームの偉い人から激しい叱責を受けてしまった。
    これは偶然、あべしんが前日に見ていたテレビで知った新型アトラクション『REEAST ROOM』さんの支援を受けることで解決した。


    そして、もう一つの問題である『人体にファウルカップを着用してハンマーで叩くのは危険』という課題については、大島が既に回答を用意していた。


    汎用ヒト型金的対策兵器……『人造人間ウンチョウクン初号機』である!

  • 刮目して見よ! この雄姿を!
    サイズは約65センチ。ファウルカップに合わせてプチプチと新聞紙で造られたその肉体は、触ってみるとちょっと引くほど人の筋肉に似ている。


    実際のウンチョウ氏の体躯を考えれば小ぶりではあるが、今回の実験にあたってはちょうど良いサイズではないだろうか。


    さあ、早くも段取りは整った!
    いざ、出陣である!

  • ――そして、話は冒頭へと戻る。


    伊藤
    「みんな思い出してくれた? この日のためにあんなに段取り頑張ったんだから、今日こそは約半年ごしの悲願を達成するよ! いいね!?」


    麻生鍵谷あべしん大島
    「「「「うーっす(棒)」」」」


    いまいち気乗りのしない返事の4人だったが、やるとなったら行動は素早い。
    REEAST ROOM名物の殴られ人形くんにウンチョウクン初号機を合体。
    ここに、ウンチョウクン初号機は正式採用型となった!

  • 麻生
    「では早速……よいしょっと」

  • ごすっ!


    ハンマーの鈍い音がREEAST ROOMに木霊する。



    麻生
    「あれ?」


    伊藤
    「どうしたの?」


    麻生
    「全然手ごたえがないんですよね。なんというか、破壊したっていうより、ボールを打ったっていう程度な感じです」


    鍵谷
    「そんなわけないじゃないですか? 麻生さん、手加減してるんですよ。『TSUYOSHI』を立ち上げた俺が、本当の金的ってやつを見せてやりますよ!」


    鍵谷が持ち出したのは鉄パイプ!
    ……この人、本物の可能性あるな。



    鍵谷
    「いくぞコラァ!……おりゃああああああ!」

  • ばふっ!


    鍵谷
    「あれっ!?」


    その反応は、麻生と同じ。


    鍵谷
    「これ、多分壊れないですよ。すごい守られてる感じがします。硬気功ってこんな感じなんですかね?」


    さっきまでバーサーカーモードだった鍵谷がいつもの穏やかな表情に。


    伊藤
    「え。ちょっと貸してみてよ」


    俺はウンチョウクンを分離し、台の上に置く。


    伊藤
    「こうしたら、確実に壊れるでしょ?」

  • 精神を集中し……。

  • 一息に振り下ろす!


    伊藤
    「……あれ?」


    なんだこの感触……衝撃が分散吸収されているような?


    そうなのだ。もちろん、ウンチョウクンがプチプチで出来ていることも影響しているのだろうが、それ以上にファウルカップとベルトのおかげで衝撃がいい感じに分散。しかも、中心部は固く守られている。


    これは……。



    大島
    「これ、マジで防げてるまであり得ますね」


    その後、あべしんも含めて全員でめった叩きにしてみたが、ファウルカップは壊れず。


    伊藤
    「ファウルカップ、マジですごいね……」


    鍵谷
    「今回は完全に検証できましたね。担当としてはちょっと残念ですが、『ファウルカップがあればツヨシの金的も防げる!』」


    伊藤麻生あべしん大島
    「「「「おおー」」」」


    鍵谷が宣言すると同時に、どこからともなく拍手が沸いた。
    と、その時……



    大島
    「あれ? ちょっ! みなさんこれ、見てくださいよ!」
    片づけのためにファウルカップをウンチョウクンからはがしていた大島が、声を上げる。

  • ん? なにか変なところある?


    ……って、あれ?

  • 中心部が……股間が……!

  • 破れている!!!!!


    麻生
    「……ファウルカップは無事だけど、ウンチョウクンは逝ってしまった……」

  • 外からは無傷に見えて、中は満身創痍!
    その姿はまさに、弁慶の仁王立ちである!


    ハンマー金的による衝撃はファウルカップを破壊することは出来なかったものの、ウンチョウクンを破壊せしめていたのだ!


    そしてここに、我々の掲げていた長年の疑問がついに氷解したのである!



    伊藤
    「今度こそ検証できた! ファウルカップがあっても、ツヨシの金的は衝撃波を伝えてしまうので股間は守れない!」


    俺が高らかに宣言すると、再び、自然と麻生たちから拍手が巻き起こった。


    麻生
    「やっと……やっと、検証できた……」


    鍵谷
    「よかったですね、リーダー!」


    麻生
    「これで、大腕を振って編集部に帰れる!」


    『REEAST ROOM』から外に出ると、言い知れぬ解放感が俺たちを包んでいた……。

  • ――編集部に戻ると、石橋もまた俺を、俺たちをスタンディングオベーションで迎えてくれた。


    石橋
    「素晴らしい! ようやく検証企画として成立しましたね! 今回の件は伊藤さんはもちろん、伊藤さんが巻き込んだ仲間たちが段取り力と実行力を発揮してくれた結果ですよ。100点って言ってもいいんじゃないですか?」


    伊藤
    「いやー。正直、今回は手ごたえがあります。これも石橋さんにいろいろ教えていただいたおかげです!」


    麻生
    「伊藤さんがいたからこそです。あべしんが店を見つけてくれたのも大きかったし、大島さんがウンチョウクンを作ってくれたのも大きかった。鍵谷さんも持ち前の破壊衝動を存分に発揮してくれましたしね」


    伊藤
    「本当に、誰が欠けても成立しない企画でした。それにしても、アイデアと段取りと実行っていうのはすべての仕事において共通ですよね。俺、確かに店長に近づいた感覚がありますよ」


    そう。俺は満足していた。これまでの人生になかったほどの達成感だ。
    今の自分なら、何でもできるような気がする。
    少年マンガの主人公のような『無敵感』が細胞の一つ一つを満たしていた。



    伊藤
    「この企画は、俺たちとしては小さな一歩かもしれないけど、サイコミとしては大きな一歩だよ! サイコミで、みんなで何かをやり遂げるって経験ってなかなかないじゃない?」


    大島
    「確かに編集者同士が一緒に動くことって少ないですね。もちろん、お互い手伝いあうことはありますが、一つの企画をこの人数でやることは少ないです」


    鍵谷
    「普段はやれなかった企画が出来たのは、伊藤さんのおかげですね」


    あべしん
    「本当、伊藤さんすごいです!」


    マジか。俺、こんなに人望があったのか!
    そうだよな。俺、もともとクラスの人気者だったし。この程度の人望はあって当然なんだよ! そうだ。俺はようやく、元の場所に戻ってきたんだ!



    伊藤
    「いやー、そうだよな。もともと俺がサイコミを作ったんだもんな。やっと、調子が出てきた感じだよ! みんな、ごめんねー。最近の俺、ちょっと弱ってたよね。うん。その結果、葛西さんとかにも負担かけちゃったんだろうなあ。店長として、葛西さんにも謝らないとね。あ、そうだ! 俺が店長と編集長を兼任するのはどうかな? みんな、葛西さんより俺との方が働きやすいでしょう!? うん、そうしようよ! みんなも賛成してくれるよね!? 俺が編集長になれば、俺の巻き込み力と段取り力、それから作家さんの実行力を集めて、サイコミをもっとよく出来る気がするんだけどな! みんな、どうかな!?」


    麻生鍵谷あべしん大島
    「「「「……」」」」


    あれ? なんだ、この沈黙?
    俺の呼び掛けに、麻生も、鍵谷も、あべしんも、大島も、みんな黙っている。
    しかも全員が、俺から目をそむけている。


    そこで俺は気付いた。
    編集部の片隅に、葛西がいることに。

  • 伊藤
    「あれ? 葛西さん、いたの?」


    葛西は無表情のまま、絞り出すような声で話した。


    葛西
    「確かに伊藤さん、最近頑張ってますよね。俺も、すごいなって思いますよ。確かに伊藤さんが編集長になったら、今より楽しい編集部になるのかもしれないですね。俺も、まあ、俺なりに頑張っているつもりですけど、足りてないってのもわかってはいるんで。俺としては、最終的にはみんなが一番いいって思える状態になってもらえれば別に、なんでもいいかなと思ってますよ」


    まずい、これはまずいぞ!


    伊藤
    「いや、そういうつもりじゃなくて。俺、ちょっとほら、気持ちよくて、口が滑ったっていうの? うん。それだけなんですよ。別に、葛西さんを否定したわけじゃないんですってば」


    葛西
    「まあ、わかってますよ。伊藤さんがそういう人じゃないってことくらいは。でもまあ、うん。やっぱり結局は、俺が決めることじゃないんで。……それじゃあ、俺ちょっと走ってくるんで。お疲れ様です」


    葛西は小走りで部屋を出ていく。
    気まずい。実に、気まずい……。



    伊藤
    「葛西さん、どうしちゃったのかなー。冗談なんだけどな……。もしかして、傷つけちゃった? いや、そんなはずないよね? そうだよね? みんな?」


    麻生鍵谷あべしん大島
    「「「「……」」」」


    再びの沈黙。
    気まずい。気まずすぎる……。
    その沈黙を破ったのは、麻生だった。



    麻生
    「あの、俺ちょっと作家さんと打ち合わせあるんで、ここで失礼しますわ」


    え? 聞いたことがないくらい棒読みなんですけど!?


    鍵谷
    「俺も嫁から早めに帰ってきてねって言われてるんで!」


    いやそれ、本当? 初耳だけど!?


    大島
    「俺、写真の整理してきます」


    その作業、明日でもいいよね?


    あべしん
    「あ、大島さん! 俺も手伝いますよ」


    あ、そこ乗っかるの?


    気づけば全員が、部屋から出て行ってしまった。


    ええええええええ!?
    みんな、どうしたの?
    さっきまで、あんなに楽しそうにしてたじゃん?



    伊藤
    「え? ちょっと……え……?」


    俺は、ただ一人残った石橋に助けを求めた。


    伊藤
    「これ、どういうことでしょう? 石橋さん?」


    石橋はゆっくりと口を開いた。


    石橋
    「伊藤さん、さっきのはちょっとよくなかったですね。僕も経験がありますが、やっぱり編集長って軽い気持ちでやれるものでもないんですよ。たくさんの編集者を束ねなければいけませんし……編集者を束ねるということは、その人たちが担当している作家さんたちとその家族、それから作品を読んでくれる読者のみなさんの人生に、ある種の責任を持つってことなんで」


    伊藤
    「あ、はい……」


    石橋
    「伊藤さんは、店長としてそんな編集長よりもある意味では上の立場になるわけなんで、もうちょっと敬意をもって接していただいた方がよかったかもしれませんね。普通に考えても店長になるなら、編集長こそが一番の仲間にしなければならない存在だと思うんですよ」


    伊藤
    「いや、でも……そうかもしれませんけど……」


    石橋の言うことはわかる。
    だけど俺は、葛西と距離を詰めることに抵抗があるのだ。
    石橋の与えてくれた数々の試練の結果、俺は成長できたと思う。
    だけどそれでも、葛西との溝はどうしようもなく埋まっていないんだ。
    これはもう、自分自身でもどうしようもない、生理的なものですらある……。


    俺の沈黙が重苦しい空気をもたらし、石橋が、小さくため息を吐く。
    ――しばらくして、編集部に葛西が戻ってきた。



    葛西
    「あ、お二人まだいたんですね。すいません。忘れ物を取りに来ただけなんで……」


    石橋
    「葛西さん、たまには飲みに行きましょう」


    石橋の声は、必要以上に明るかった。
    俺はさすがに、『俺も行くよ』とは言えなかった。



    葛西
    「え? 俺、走ってきたところですよ? 5kmほど…」


    えっ!? この短時間に5キロ!?
    速すぎるでしょ……。



    石橋
    「まあいいじゃないですか……たまには」


    石橋は葛西を連れ出し、夜の街へと消えていった。


    そして、数日後。

  • 俺の机の上に、果たし状が置かれていた。


    To be continued…


    ※取材協力:REEAST ROOM(リーストルーム)
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  • 前回の記事はこちら

    「かーくん、主人公を知ろう!」前編

  • 「かーくん、主人公を知ろう!」後編