連続サイコミコラム小説~序章~
「かーくん、店長になろう!」
連続サイコミコラム小説
「かーくん、店長になろう!」
- ※このコラムは(実在の人物、団体とは多少関係ありますが、)フィクションです。
この物語を、すべての働く男たちに捧げる……!
登場人物紹介
組織図
俺の名前は伊藤和輝。通称はかーくん。もちろん、俺がつけたわけじゃない。
サイコミコラムの企画で無理矢理つけられたあだ名だ。
俺、36歳だぜ? 自称してたら寒すぎるだろ(笑)。
今は、サイコミのサブマネージャーをやっている。
でも、最初は事業部長だったんだ。
現在の編集長である葛西も、マネージャーの長谷川も、俺が採用したんだぜ?
サイコミを作ったのは俺なんだよ。これは本当さ。
……でも、今の俺は二人の部下だ。
仕事も奪われて、最近は暇だよ。
……たまに思っちまうんだよな。俺って、何者なんだろう?
俺の居場所って、どこにあるんだろう……?ってね……。
サブマネージャーなんて言えば聞こえはいいけど。
結局、マネージャーとしては力が足りなかったってことだ。
自覚はしてる。それでも思っちまうんだよな。
俺はもっと出来るはずだって。
もっと認められていいはずだって。
普段はもちろん、そんな感情は噛み殺している。
だけど、たまに聞こえちまうんだ。
同僚と、新しく入ったメンバーの会話がさ……。
- ――夜の編集部で、静かに囁く声がする。
高橋
「伊藤さんって、何してる人なんですか?」
長谷川
「サブマネージャーですよ」
葛西
「サブマネージャー(笑)」
高橋
「それ、マジでよくわかんないんですけど? マネージャーでも編集長でも運用リーダーでもないんですよね? 偉いんですか?」
長谷川
「まあ、マネージャーの補佐ってことですからね。よくやってくれてますよ?」
高橋
「へー(棒)」
葛西
「興味なさすぎだろ! 一応上司だぞ(笑)……聞こえたら気まずいだろ?」
なんだよ、葛西のあの感じ……悪意があるんじゃないのか?
はっ!
もしかして葛西のやつ……昔合コンに連れて行ったら保険の勧誘だったって……あの件を今でも根に持っているのか!?
確かに三年経った今でも勧誘のメールがきて不快だが……
編集長にしてやったという恩に比べればぜんっぜん小さいだろ!
まあ、俺は心が広いから、顔には出さないけどな!
幸い、もうすぐ定時だ。今日の分の作業も終わっている。
あとは日報を書いて、笑顔で帰るだけだ。
伊藤
「今日の仕事、おしまい! お疲れ様!」
どうだ。この完璧な笑顔。
これこそが大人の対応ってやつだろ?
葛西・長谷川・高橋
「「「おつかれさまでーす」」」
高橋
「(ぼそっと)帰るのはやっ……」
長谷川
「いや、仕事が終わったら帰る。社会人の鑑ですよ」
葛西
「俺の仕事、ちょっと持ってほしいな。まあ、無理なんだけど」
長谷川
「葛西さん、聞こえますよ? もう少し声はおさえましょう」
高橋
「それより、終わったら飲みに行きましょう! 中目いきましょうよ! 中目!」
葛西
「いいねえ!」
――くそ……なんで俺を誘わないんだよ……!
- 確かに、俺の仕事量は減った。
早く帰れるのもうれしい。
だけど、どうしてこんなに寂しいんだろう?
なんとなく、葛西も長谷川もよそよそしい感じがする。
昔はこんなことなかった。
リリース直前には、みんなで深夜まで一緒に作業をした。
時間の流れが激しくて辛いこともたくさんあったけど、それ以上に楽しかった。
でも、今の俺は……一人で、誰でもできるような作業ばかりをやっている。
――あれ? 俺、もしかして、要らない人間なのか?
いやいやいや、そんなはずはない。
アイツらは俺のことを必要としてくれているはずだ。
腐ってもサブマネージャー。
そもそも、俺がこのサイコミを作ったんだから……。
しばらくは、自分を抑えることが出来た。
だけど、気付くと俺は、走り出していた。
心臓がバクバクする。
来た道をそのまま走って、オフィスに向かうエレベーターのボタンを押す。
だけど、エレベーターが来る一分一秒も惜しくなって、階段を駆け上がる。
息が切れる!
ちくしょう……昔はこの程度じゃ汗ひとつかかなかったのに。
気がついたら全身がじっとり濡れている。
走ったからだと信じたい。
これは冷や汗じゃないって思いたい。
- ――俺は、俺の価値を、確かめるべく、扉を開いた!
高橋
「あれ? 伊藤さん帰ってきましたよ?」
伊藤
「ごめん……葛西さんたち残ってるのに、俺、一人だけ帰っちゃったから。戻ってきた。何かできること、あるんじゃないかと思って……」
葛西
「あ、大丈夫ですよ。仕事もう終わりましたんで」
長谷川
「ああ、僕たちも帰るところです。伊藤さんは心配し過ぎですなんですよ」
高橋
「そうです! 終わって中目に飲みに行くところなんですよ!」
確かに三人はもう帰り支度をしている。
高橋はみるからに楽しそうで、葛西と長谷川もいつも通りだ。
伊藤
「あ、そう……? そうなんだ……?」
三人は俺に笑顔を向けている。
俺は、そんな三人を見て笑顔を返そうとするが、できない。
その理由は明確だ。
俺が、誘われていないからだ!
伊藤
「……」
どうした。早く言えよ、伊藤和輝!
簡単な事だろう? 俺も行きたいって言えばいいだけだ。
こいつらならきっと受け入れてくれる。
だって、俺は一番の古株なんだぞ?
……そうだ。言うんだよ!
伊藤
「そっか。何の問題もないのか……俺がいなくても」
え? 俺、何言ってんだ?
葛西
「まあ、確かに問題はありません。伊藤さん頑張り屋さんなんですから、早く帰って休んでくださいよ」
長谷川
「運用も管理も担当者が立ってますんで」
高橋
「早く帰って、彼女とデートでもしてきたらどうですか?(笑)」
三人の間に流れる雰囲気は、『うまくいっているチーム』のそれだ。
親しくて、何でも話せて、互いを気遣っている。
そんな三人を見ていて、身体の奥から、尽きたと思っていた汗が流れてきた。
これは、アレだ……。今度こそ、冷や汗だ……。
このままじゃダメだ。振り切らないといけない。
俺も、この『チーム』に入るんだ。
今度こそ言うぞ。
俺は、お前たちと……お前たちと、飲みに行きたいって!
伊藤
「あのさ、俺って……要らない人間なのか?」
そうじゃないだろ、俺!
- 葛西・長谷川・高橋
「「「え?」」」
三人は困惑している。
当然だ。いきなりこんなこと言われても困るはずだ。
葛西
「……まあ、要るとか要らないで言ったら、要るんじゃないですか?」
長谷川
「伊藤さんはサイコミを作った立役者ですからね」
高橋
「え? マジっすか!? 伊藤さんがサイコミ作ったんですか? 俺知りませんでしたよ。マジっすか!?(2度目)」
違う。こんなこと言いたいわけじゃないんだ!
俺はただ、一緒に飲みに行きたかっただけなんだ……。
でも、これが俺の本当に聞きたいことだったんだ……。
俺の体は、心が思うよりずっと素直だったから、聞いちゃったんだ。
……そのおかげで俺、分かっちまったよ。
会話の内容じゃない。
声のトーンと、その裏側にある気遣いのせいで、見えちゃったんだよ。
葛西と長谷川が、本当は俺のことをどう思っているのか。
伊藤
「そうか……やっぱ俺、要らないんだよな……
もう用済みなんだな……?
葛西さん……長谷川さん……高橋くん……
俺、わかっちゃった。わかっちゃったんだよ!」
葛西・長谷川
「「……」」
高橋
「え? 伊藤さん、こわいっすよ(笑)何マジになってんすか?」
葛西
「ちょっと……高橋くん……」
高橋
「引きますよ……。中学生じゃないんですから、ちゃんと話しましょうよ。二人も言ってたじゃないですか。伊藤さんがちゃんとやってくれていれば、自分たちも少しは楽だった気がするって。そういうの、直接言わないからこうなるんですよ?」
長谷川
「高橋さん……今する話ではないんですよ。会話にはTPOというものがあってですね。今、この瞬間の伊藤さんはちょっと混乱なさってますし、理屈ではなく感情を考えないと……」
高橋
「あ、はい。なんかすいません……俺、ちょっと黙っておいたほうがいいってことですよね……」
なんだよその態度。やっぱ、俺のこと邪魔なんじゃないか?
あんまりだよ……。
俺がマネージャーだった時、葛西が他の編集部員と中華料理食べてたじゃん?
あの時、俺あとから入ったけど、先に帰って、お会計済ませておいたじゃん?
めっちゃかっこいい上司だったよね?
そんなかっこいい上司だった俺を、なんでそんな風に扱えるのかな!?
そういうの、やっぱ伝わらないのかな!? 葛西には!!!
もう、耐えられなかった。
情けないけど、俺の脚は勝手に動いていた。
ただ、逃げ出したかった。
葛西・長谷川「「伊藤さん!」」
二人は俺の名前を呼んでいた。
でも、追いかけてはこなかった。
最後に聞こえた言葉が、さらに俺の背中を押した。
葛西
「まあいっか。高橋くん、店どこにする? あ、長谷川さんもいきましょうよ!?」
――今、誘うべきは俺だろ!? 葛西いいいいいいいい!
ビルを飛び出して、夜の歩道に飛び出た。
頭の中にいろんな言葉が反響していた。
その一つ一つを認識するのはやめた。
シンプルに結論だけがあった。
――俺は、用済みだったんだ!
用済みになったらどうするのか?
明確だ! 一刻も早く、サイコミから去らなければならない。
だが、サイコミは俺のすべてだ。人生だ。
そこから去ると決めた以上、俺のとる行動は一つだった。
- ――俺は、この世から去ると決めた。
このトラックに轢かれて、転生する!
瞳を閉じ、光の中に足を踏み出す。
巨大なクラクションと、ブレーキ音が俺の可聴域を満たしていく……。
自然と涙があふれてきた。
ごめん、母さん……先に転生する不孝をお許しください……。
生まれ変わったらどんなスキルにしてもらおうかな?
俺、料理好きだから素材を簡単に得られるやつがいいな……。
あと、マンガ好きだから転生してもいっぱい読めるといいな……(世界観によっては無理かもしれないけど)……。
石橋
「伊藤さん!」
腕を強く引かれて、俺は歩道に戻っていた。
この男……石橋が助けてくれたらしい。
なんでそんな余計なことをするんだ!?
叫びたかったが、声にならなかった。
そもそも本気で死ぬつもりはなかった。
ちょっとセンチでヒロイックな気持ちになり、異世界転生モノの主人公気分でトラックに轢かれないギリギリのところを歩いてみただけなのだ。
しかし、石橋の真剣な瞳を見ていると、とてもそんなことは言い出せない。
石橋は、俺よりも5つ年上。
俺も読んでいた『マギ』や『モブサイコ100』の編集者で、マンガワンを立ち上げ、作り上げたアプリマンガの風雲児だ。
そんな石橋が小学館からコンサルとしてサイコミに来てくれたのは、俺にとっても幸運だったと言える。
マンガ業界未経験だった俺に、すべてを教えてくれた男。
いわば俺の師匠とでもいうべき存在だった。
黙ったままの俺に、石橋が畳みかける。
石橋
「伊藤さん、どうしたんです!? 危ないじゃないですか!」
いや、あの、えっと……。
恥ずかしさで体温が上がった。
俺、さすがにイタすぎるだろ……。なんか泣けてきた……。
石橋
「しっかりしてくださいよ! 何かあったんですか!? 何かあったなら俺に言ってください! コンサルとしては何も言われないのが一番困ります!」
石橋の指が、俺の肩に喰い込む。
その熱さが、想いが、俺に声を取り戻してくれた。
伊藤
「石橋さん……!
俺、悔しいっすよ!
俺、漫画事業部の誰よりマンガを読んでるし、愛してる。
サイコミを作ったのだって、俺だ!
なのに、葛西さんも長谷川さんも、新人たちも、誰も俺に敬意を払わない!
俺が用済みだってことすら、面と向かって言ってくれなかったんだ!
しかも、飲みにだって誘われない!
こんな情けない俺、死んだ方がマシだ!」
石橋はしばらく沈黙し、絞り出すように言葉を紡いだ。
石橋
「……伊藤さん、辛かったんですね。わかりました。俺が話を聞きます」
石橋は俺の肩を抱き、こう告げた。
石橋
「飲みに行きましょう。経費、小学館持ちで大丈夫ですから。俺、コンサルなんで!」
――そうだ! 俺が欲しかったのは、飲みに行ってくれる仲間だったんだよ!
- 石橋行きつけの伊勢海老蕎麦 清正に着いた。
俺の話を聞き、石橋は一つ大きなため息を吐いた。
石橋
「こんな時のために、俺が小学館からコンサルに来たんでしょうね」
その声は静かで、年齢相応の落ち着きに満ちていた。
子どもの頃夢見た「かっこいい大人像」がそこにはあった。
石橋
「伊藤さんは、どうしてサイコミを作ったんですか?」
伊藤
「……俺は、ただマンガが好きで。マンガに何度も救われてきて。
俺の見つけたマンガを読んでくれる人が好きで、そうやって増えた友人はかけがえのない人ばかりで!
だから、俺が面白いと思ったマンガを、みんなに知ってほしくて。
もっともっとみんなに、最高のマンガを届けたいって思って、サイコミを作ったんです!」
石橋はゆっくりと酒を飲み干し、目を閉じて呟いた。
石橋
「伊藤さんは、サイコミにどうなってほしいんですか?」
伊藤
「俺は、読んだ人がみんな幸せになるようなマンガを集めたい!
それに、もっといろんな人にサイコミを知ってほしい!
今だって、面白いマンガがいっぱい載ってるんだ!
勇気をくれるスポーツ!
元気をくれるバトル!
ときめきをくれるファンタジー!
サイコミには、全部が揃ってるんです!」
石橋は俺の言葉をかみしめるようにうなずいた。
俺は、素直に自分のことを伝えることが出来ている気がした。
これが敏腕編集者の力なのだろうか。
しばらくたって、石橋は一段低い声で言った。
石橋
「最後の質問です」
石橋は身を乗り出して、俺を見つめた。
- 石橋
「伊藤さんは、どうなりたいんですか?」
すべてが一連の会話の中で自然と整理されていた。
もはや俺に迷いはなかった。
伊藤
「俺は、もっとサイコミの魅力を伝えたい!
サイコミを一番愛してるのは俺だから!
この愛を、もっといろんな人に届けたいんです!」
永遠にも一瞬にも思える沈黙の後、石橋はゆっくり口を開いた。
石橋
「……わかりました。伊藤さんにぴったりの役職があります」
――俺にぴったりの役職!?
そんなものがあるのか!?
もう用済みで、誰からも相手にされていない俺にも……役割があるというのか!
伊藤
「石橋さん……それは?」
石橋
「……それは、店長です!」
伊藤
「て……店長?」
耳慣れたはずの言葉が、うまく入ってこなかった。
サイコミの、店長? 書店でもないのに?
それって、どういうことだ?
石橋
「今、サイコミは大きな変革期を迎えています。
サイストアでの直販も始まりますし、
オリジナルの作品だけではなく、僕たちが面白いと思った他社様の作品の掲載をすることも企画しています。
でも、それを伝えてくれる人、お客様に届けてくれる人がいません。
編集にも、マネージャーにも、それはできないんです。
紙の漫画は、これまで書店員の方々が届けてくれていました。
でも、電子書籍やアプリから始まったサイコミのマンガを書店員の方々に届けるには時間がかかります。
僕は、この問題を解決する方法はないのか、ずっと考えてきました」
石橋の言葉には、熱がこもっていた。
なるほど。アプリや電子書籍中心になり、従来の出版の流通モデルは変化した。
特に、これまで多くの書店員によって築かれていた『届ける仕組み』がこれまでほどうまくいっていないように見える。
……でも、いったいどうすればいいんだ?
石橋
「そこで、マンガアプリであるサイコミに必要なのは『店長』なのではないかと思いいたりました。
僕の言う店長とは、サイコミの作品を宣伝し、時には直接販売し、その面白さを伝えてくれる人です。
わかってはいたけど、適任が見つからなかった。
でもここにいたんです。僕の目の前に!」
背筋がぞくっとした。
自分の中のバラバラだったパズルのピースが、ハマっていく音が聞こえた。
石橋
「伊藤さん、店長が出来るのは、サイコミを愛し、サイコミに愛されてきたあなただけですよ。
この仕事は葛西編集長にも、長谷川マネージャーにも出来ません。
それどころか、これから直販が始まるサイコミを一つの店舗と見た時、店長は最高責任者となります。
編集長は開発部門長に過ぎませんし、マネージャーは人材管理者に過ぎません。
店長になれば、再び二人は伊藤さんの部下となったと言っても過言ではありません。
もちろん、この変化はサイコミにとっても必要な変化ですし、読者の皆さんにも、新たなる作品の出会いという形で幸福を届けることが出来ます。
伊藤さん……いいえ、
かーくん、店長になろう!」
俺の中のパズルは急速に組み上がり、一枚の大きな絵になった。
店長……サイコミの、店長!
そうか。『届ける仕組み』が変わったのなら、作る側も変わらなければならない。
作る側から、もっと届けなければならないんだ。
店長なら、それが出来る……!
そして、これからのサイコミにとって店長が最高責任者……。
俺の過去にかかった薄暗い闇を……屈辱を、この栄光で晴らすことが出来るんだ!
体中に熱が集まる。
やるべきことが決まると、人間はこんなにも強くなるのだ。
伊藤
「俺はサイコミを作り、サイコミに何度も救われてきました!
石橋さん、俺は店長になります! やらせてください!」
石橋はその日一番の笑顔で応えてくれた。
石橋
「ええ、よろしくお願いします!」
- 俺は、石橋の差し出した手のひらを握る。
石橋と俺が『チーム』になった瞬間だった。
石橋
「でも、伊藤さんにはまだ店長としてのスキルも、心構えも足りません。最初にやるべきことは、試練を乗り越え、スキルを手に入れることです」
試練……?
仕事では聞かない言葉に、自然と緊張が走る。
これだけは、聞かなければならなかった。
伊藤
「あの、試練って、土日つぶれます?」
石橋の視線が痛い。絶対零度とはこのことだ。
伊藤
「いや、あの俺、仕事は確かに暇なんですけど。
最近狩猟免許をとって、船舶免許もとって、
車も買ったんで……結構プライベートは忙しいっていうか、充実してまして……」
石橋の視線は絶対零度の数百倍。タナトスすら凍らせそうな冷たさだ。
石橋
「伊藤さん?」
さすがの俺も、空気を読んだ。
伊藤
「わかりました。やってみせます!」
石橋が、大きなため息を吐く。
石橋
「今のやり取りで、伊藤さんに足りないものが見えてきましたね」
伊藤
「……俺に足りないものって……」
なんだろう?
空気を読む力?
物事を進める覚悟?
そもそも運が足りない気がするし、周りにも恵まれていない……。
思い悩む俺に、石橋さんはスマホを取り出してみせた。
石橋
「それは……これですよ」
そこには、とあるマンガのロゴが浮かび上がっていた。
- To be continued…
※撮影協力:伊勢海老蕎麦 清正(1周年おめでとうございます!)
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