夏の連続サイコミコラム小説
「かーくん、主人公を知ろう!」後編
夏の連続サイコミコラム小説
「かーくん、主人公を知ろう!」
- ※このコラムは(実在の人物、団体とは多少関係ありますが、)フィクションです。
この物語を、すべての孤独な男たちに捧げる……!
登場人物紹介
組織図
- ◆◆◆前回までの『かーくん』◆◆◆
自称・サイコミを作った男・伊藤和輝は鍛えていた。
80キロ寸前だった体重は徹底した食事の管理と『君に足りないのは筋肉だ!』の作者・大石先生による筋トレメニューで急降下。60キロ台まであと一歩。
すべては上に立つ者にふさわしい「美しい肉体」を手に入れ、サイコミの『店長』となり、自らを出世レースで追い抜いた編集長・葛西とマネージャー・長谷川を再び部下とするため!
しかし、あまりにストイックなその姿は編集部のドン引きを招き、コンサルタントである石橋からも「面白くない」と一刀両断されてしまう。
「伊藤さん、他人に興味をもちましょう。そして、面白さを伝えてもっと周りをまきこみましょう。それこそが『店長』の仕事なのですから!」
石橋の言葉に感銘を受けたかーくんは『無関心』な自分に別れを告げるため『無関心くん』がチャレンジしたリフティング30回に挑戦したのだが……結果は!?- ・・・
リフティングにチャレンジした翌日。
俺と麻生は石橋に呼び出されていた。
正直、気分は重い。
50回どころか30回にも満たなかった。
コンディションが悪かったとはいえ、結果は結果だ。
しかも、今回の企画に誰も巻き込むことは出来なかった。
石橋
「伊藤さん、麻生さんから動画見せてもらいましたよ。22回だったみたいですね。未経験の割には頑張ったと思いますが……」
伊藤
「……わかっています。結果の出ない努力は頑張り間違い。ストイックすぎると叱られるかもしれませんが、俺は結果を出すことが出来ませんでした。『店長』失格です。こうなってしまったら、やはり転生して詫びるしか……」
麻生
「ちょっと待ってください」
え? 麻生?
麻生
「俺、現場で見てましたけど、伊藤さんの頑張りはすごいと思いましたよ? 伊藤さんのことは別に好きでもないですし、むしろ苦手な方ですけど、何もできなかった人がリフティングできるようになるって結構大変ですし、そこは認めてもいいんじゃないかって思うんですけど」
伊藤
「麻生さん?」
麻生
「まあ、頑張り間違いかもしれませんけど、俺だってそういうことありますし、結果だけが全部っていうのも違う気がするんですよね。マンガだってそうじゃないですか。売れてなかったりマイナーだったりしても、頑張って描いてて、なんかいいなって作品にぐっと来たりするじゃないですか」
伊藤
「麻生さん、もういいって」
麻生
「俺、編集としてうまくいってるとは言えないんですよ。もう30代後半だし、担当作だってスーパーヒットも映像化もしてない。でも、俺なりにマンガと向き合って、頑張ってやってきたつもりなんです。誰も見てないかもしれませんけど、どうにかやってきたんですよ。周りがどんどん出世したり、成功したりしていく中で、人知れず頑張ってたけど評価されなかったことだってあった。俺、伊藤さんの気持ち、ちょっとわかるんですよ」
伊藤
「麻生、さん……」
麻生
「年下の葛西さんに編集長やってもらってて、自分はリーダーではあるけど結局ヒラの編集で。頑張ってはいるけど同世代とか若手が俺よりも結果を出したりしてて。正直、俺だって悔しいんですよね。だから、俺がここで伊藤さんの頑張りを否定しちゃったら、自分を否定することにもなるんですよ」
麻生の突然の告白を、石橋は黙って聞いていた。
時折、麻生を見ているようで、どこか遠くを見ているような気がする。
もしかすると石橋は、これまで出会った様々な編集者の顔を思い出しているのかもしれない。その中には、麻生と同じように苦しんだ編集者もいるのだろう。
麻生
「俺、頑張ってる伊藤さんの姿にちょっとぐっときました。最初は長谷川さんの代わりのつもりだったし、途中で面白いかなと思ってブッキっぽいことを言ってみたりしてふざけてましたけど、雨の中22回もリフティングをする姿って、目の前で見ると結構すごいですよ。コラムとか動画では伝わりきらないかもしれませんけど、それじゃ、ダメなんですかね」
石橋は、ゆっくりと麻生に告げた。
石橋
「僕も、それでいいと思いますよ」
伊藤・麻生
「「え!?」」
石橋
「もともと、今回の『試練』は伊藤さんが自分の面白いと思ったことを周りに伝えられるかどうかと、周りの人を巻き込めるかどうかが鍵でした。だから、伊藤さんは最初に長谷川さんを巻き込んだ時点で試練は達成できたと言えます」
伊藤
「でも、俺は自分からは何も表現できていません。『面白い』を伝えることが出来ませんでしたし、長谷川さんだって自発的に手伝ってくれただけで……」
石橋
「その通りです。でも、麻生さんには伝えることが、巻き込むことが出来たじゃないですか」
伊藤
「え?」
石橋
「麻生さんは、頑張っている伊藤さんに心動かされた。雨の中でリフティングする姿に胸を打たれたんです。これも一つの『巻き込み方』ですよ」
俺は、隣に座る麻生を見つめた。
麻生
「俺、今回はちょっと伊藤さんのこと見直しましたよ。俺だったらこんなことできねえなって。確かに伊藤さんってちょっと変だし、ちょっと痩せてきてかっこよくなってきてむかつくんですけど、俺は頑張ってることを否定するのは嫌いなんで。次何かあったら手伝おうって思っちゃいました」
麻生、お前!
胸が熱くなるというのはこういうことなのだろうか。
全身に鳥肌が立ち、涙腺が緩んでいく。
俺は、なんとか涙がこぼれるのだけは、避けた。
伊藤
「石橋さん、もう一度、リフティングするチャンスをもらえないですか? 俺のがんばりが間違いじゃないって、証明させてもらえませんか?」
石橋
「いえ、リフティングはこれで終わりです」
麻生
「石橋さん……」
非難めいた麻生の言葉を、石橋は次の言葉で打ち消した。
石橋
「でも、リフティングの代わりとなる試練があります。それは、キャッチフレーズ作りです」
伊藤
「キャッチフレーズ作り?」
石橋
「新人編集者が必ずやらされる頭の訓練です。新しいマンガやサービスのキャッチフレーズ……いわゆる売り文句を、一時間で何十個も考えます。数個くらいならぽんぽんと浮かぶものなんですが、考えれば考えるほどよくわからなくなっていき、途中でちょっとハイになったり、異常に苦しかったり、最後にはもうすっからかんで立ち上がることもできなくなったりします。しかしながら、キャッチフレーズ作りは編集者にとって大切な日常業務であり、基礎訓練。編集者にとってのリフティングなんです」
伊藤
「日常であり、基礎……たしかにリフティングに似ている……」
麻生
「もう二度とやりたくない……だけど、それなりに練習にはなる。しかも、優れた編集者ならばサクサクと思い浮かぶこともある……この辺も、リフティングにそっくりです。……ちなみに俺は、苦手です」
石橋
「伊藤さんは編集者ではありませんが、店長たるものそれくらいできても良いのでは?」
伊藤
「うーむ……確かに」
石橋
「7月25日から、サイコミで他社作品のイッキ読みが始まっています。まずは伊藤さんに、麻生さん指導の下で『イッキ読み』のキャッチフレーズを考えていただきたい! 個数はリフティング50回に満たなかった数……28個でどうでしょうか? リベンジとしても申し分ない内容だと思いますが……?」
麻生
「……俺が指導者っていうのが俺自身不安ですが、伊藤さんが頑張ってくれるならやってみてもいいかなと」
伊藤
「リベンジの機会をもらえるだけでも俺としては十分です! やりましょう!」
――数分後
麻生
「えーと、それではキャッチフレーズの基本からやっていきたいと思います」
伊藤
「お願いします! ……っていうか、そもそもキャッチフレーズってなんなんですか?」
麻生
「そっか。そこからですよね。キャッチフレーズっていうのは、売り文句のことです。だからこそ、読んだ人の気持ちが動けばなんでもいいんですよ。すごく主観的なものですし、時代や性別、年代によっても何がいいかは変化しちゃいます。いい悪いも正しいとか間違ってるもないんです」
伊藤
「それじゃ、なんでもいいの?」
麻生
「そう。なんでもありです。でも、だからこそ難しいんですよ。なんでもいいんだけど、人の気持ちは動かさないといけない。しかも、人によって気持ちの動く条件は違ってくる……」
伊藤
「それじゃ、どうしたらいいの?」
麻生
「まずは、数を作ること。それから人に見てもらうことです。石橋さんから出された課題も、それを前提にしたものです。いろんな作り方や考え方は、あとから覚えたほうがいいかもしれません。最初にいろんな条件を課されてしまうと、作れなくなっちゃう人も多いですからね。それじゃ、始めてみますか?」
伊藤
「ちょっとまって! キャッチフレーズ作る前に、そもそも『イッキ読み』がなんなのか知りたいんだけど!」
麻生
「え? 伊藤さん、サブマネージャーなのに知らないって大丈夫ですか?」
伊藤
「いやまあ、知らないわけじゃないけど……改めて?」
麻生
「しょうがないなあ。ざっくり説明しますよ?」
麻生
「ざっくり、こんな感じです!」
伊藤
「え? これ自体は昔からなかったっけ?」
麻生
「そうなんですけど、7月25日の『リィンカーネーションの花弁』を皮切りに、過去にサイコミで連載していた作品だけでなく、他社さんのレジェンド的作品も掲載されることになったんです。俺たち編集者としては手ごわいライバルかつ強力な援軍って感じですね。お客さんにとっては面白い作品が単純に増えるんで、魅力的な企画かな、と思います」
伊藤
「サイコミがより活気づきそうだな……店長としても腕が鳴るね!」
麻生
「とまあ、宣伝はこれくらいにして、キャッチフレーズ、考えてみましょうか!」
伊藤
「え? いきなり……!?」
麻生
「いきなりですよ」
伊藤
「なんか、難しいな。イッキ読みって言葉を活かした方がいいのかな?」
ちらり、と助けを求めて先生役の麻生を見てみるが……。
麻生
「今回は、伊藤さんの力でやりましょう。そもそも俺、苦手なんでちゃんとしたアドバイスが出来る自信はありません!」
自信満々に言うことかよそれ……。
悩んでいる間にも時間は無情に過ぎていく。
良く考えてみれば、『イッキ読み』という言葉自体が結構つかみがいいんだよな。
そこを活かすのはアリかもしれないな。
あとは、イッキ読みをちゃんと説明してあげるといいかもしれないな。
うーん。そう考えると、イッキ読みのいいところは、めちゃくちゃたくさん読めることかな? まあ、サイコミは連載作品もこれまでの話が全部読めるからなあ。ウリとしては弱いのかな???
様々な思考が泡のように浮かび、消えていく。
イッキ……一気……眠るより読みたい……食べるより読みたい……そんな感じの、キャッチフレーズを……。
あ、そうだ。俺は食べることが好きだから、それよりもすごいって言われたら読みたくなっちゃうかも……。
一つひらめくと、リフティングが繋がるようにいくつかのキャッチフレーズが生まれた。
ちょっと楽しくなっては苦しくなり……を繰り返して一時間。
ようやく、28個のキャッチフレーズを生み出すことが出来た。
伊藤の作ったキャッチフレーズ
・三度の飯よりイッキ読み
・長編マンガをその場で読破!
・寝る時間なんてない。だってマンガが読み終えないから
・寝ないこが読んでるマンガはなんだ?
・こんなにマンガが読めていいの?
・初めて読むオリジナルマンガがいきなり全部読める!
・泣けるマンガも格好いいマンガもいきなり全話解放!
・うわっ…サイコミのイッキ読みマンガ多すぎ…?
・毎日来るだけでマンガを全話読めるなんて・・・
・あなたは、マンガを全話イッキに読みたいと思いませんか?
・オリジナルマンガ全話解放!今だけ!
・完結したオリジナルマンガがスタミナ使うだけで全話イッキに読める事案
・どーせ全話読むなら、まだ見ぬオリジナルマンガを
・「マンガを全話イッキに読みたい?」その夢かなえます。
・電車通勤・通学中にはイッキに読み切れないマンガ量そろえてます。
・読み切れない!とまらない!イッキ読み!
・マンガ全話イッキに開放中。あとはあなたが読むだけです。
・もし今日からオリジナルマンガが全話読めるならどうする?
・まだ読んでないマンガに出会う機会。しかもイッキに全話!
・いつでもどこでも全話イッキによめちゃう!
・明日、マンガが読めるならどのイッキ読みにする?
・やめられないとまらない。
・マンガ読めるよ~全話イッキに
・イッキ読みしたくない?
・もう読めばいいじゃない
・いやいやイッキに読んでくださいよ
・読んでください。イッキに。お願いします。
・考えるのはもうやめた。さっさと読め
麻生
「はい、お疲れ様でしたー」
伊藤
「いや……ほんと、マジで疲れた……。連続しなくていい分リフティングより楽だと思ってたけど、終わるまでやらないといけないところは逆につらいわ……」
麻生
「編集者の日常を体感していただけて何よりです。28個のキャッチフレーズを俺含めて4人の編集の目で見て『良いキャッチ』を選んで解説していきます。まずは俺から……」
麻生の選んだキャッチフレーズ
・三度の飯よりイッキ読み
・こんなにマンガが読めていいの?
・泣けるマンガも格好いいマンガもいきなり全話解放!
・うわっ…サイコミのイッキ読みマンガ多すぎ…?
・毎日来るだけでマンガを全話読めるなんて・・・
・オリジナルマンガ全話解放!今だけ!
・どーせ全話読むなら、まだ見ぬオリジナルマンガを
・「マンガを全話イッキに読みたい?」その夢かなえます。
・読み切れない!とまらない!イッキ読み!
・マンガ全話イッキに開放中。あとはあなたが読むだけです。
・まだ読んでないマンガに出会う機会。しかもイッキに全話!
・いつでもどこでも全話イッキによめちゃう!
・明日、マンガが読めるならどのイッキ読みにする?
・読んでください。イッキに。お願いします。
伊藤
「えっ。こんな感じ? 結構自信あったんだけどな……ちゃんと選んでくれたの?」
麻生
「基本的には、『主語がわかりやすいもの』を選びました。やっぱりキャッチって、『自分事』にならないと読者には届かないんですよね。イッキ読みの場合、主語はサイコミか、読者ですよね。今回選んだものはそれが明確で、選ばなかったものは誰に伝えているのかわからなかった。たとえば『寝ないこが読んでるマンガはなんだ?』ってキャッチがありましたけど、これって『寝ないこ』が読者でもサイコミでもないから『他人事』なんですよね」
な、なるほど……。
ちょっと悔しいが確かにそうかもしれない。
『イッキ読みしたくない?』っていうのも、読者でもサイコミでもない、なんというか第三者から言われてる気がしてイラっとするな……。
伊藤
「た、確かに、ちょっと客観的になっちゃってるかも。そういえば、麻生さんがいいなと思うキャッチフレーズってどんなのがあるの?」
麻生
「それでは、これまでサイコミのホームを彩ってきたバナーから選びましょうか。そうですね……これなんかはどうですか?」
伊藤
「なるほど。主語がはっきりしている」
麻生
「主語をキャラクターに置いて、少女が壊れるという物語のウリを前面に出したキャッチです。どうして壊れたの? 何があったの? って興味を引いてくれますよね」
伊藤
「確かに、どんなストーリーなのか気になるね」
麻生
「こんな感じで、他の編集の評価も見ていきましょう。
吾田の選んだキャッチフレーズ
・三度の飯よりイッキ読み
・寝る時間なんてない。だってマンガが読み終えないから
・こんなにマンガが読めていいの?
・泣けるマンガも格好いいマンガもいきなり全話解放!
・毎日来るだけでマンガを全話読めるなんて・・・
・オリジナルマンガ全話解放!今だけ!
・マンガ全話イッキに開放中。あとはあなたが読むだけです。
・いやいやイッキに読んでくださいよ
伊藤
「うわ。ぐっと減った……もしかして吾田さん、俺のこと嫌いなんじゃないの?」
麻生
「いやいや、そういうのは基準に入れてませんよ。ちなみに吾田編集は、『いわかける!! –Try a new climbing-』や『シスコン兄とブラコン妹が正直になったら』などの編集さんで、『ポスターや広告を作るときに読みやすい、デザインしやすい言葉が入っているかどうか』が基準になっています。確かに『解放』とか『イッキ』とか、デザインした時にかっこいい言葉が目立ってますね。逆に『うわっ…サイコミのイッキ読みマンガ多すぎ…?』みたいに、ちゃんと読まないとわからないものは外れています」
そういわれるとぐうの音も出ない。
『完結したオリジナルマンガがスタミナ使うだけで全話イッキに読める事案』とかは長すぎて読めないもんな……。
伊藤
「なるほど。ビジュアルというか、読みやすさも大事なんだね……」
麻生
「そうですね。逆に、パッと見で強い言葉を重ねると、それだけでキャッチになることもあります。たとえば……」
伊藤
「うわ、怖い!」
麻生
「そうなんです。怖いって気持ちを動かしてくれますよね。イラストも相まって、強いキャッチだと思います」
鍵谷の選んだキャッチフレーズ
・三度の飯よりイッキ読み
・うわっ…サイコミのイッキ読みマンガ多すぎ…?
・読み切れない!とまらない!イッキ読み!
麻生
「お次は、『ヒナ』『剣に焦ぐ』『スリースター』『今どきの若いモンは』などを担当している鍵谷編集です。編集部でもキャッチフレーズがうまいと言われています。鍵谷編集の基準は『音が綺麗かどうか』。音読して耳に良いものを選んでくれています。確かに、『読み切れない!とまらない!イッキ読み!』なんかは声に出すと韻を踏んでいて心地よいですね」
お。さすがは鍵谷さん、わかってくれてる!
伊藤
「そこは正直、俺も意識したよ」
麻生
「その割には鍵谷さんに認められたキャッチは少なかったですね」
伊藤
「うっ……意識するのと出来るのはやっぱり違うんだよね……」
麻生
「それと、鍵谷さんはキャッチ作りに自分なりの手順があるそうで……。
『まず、売りを考えて、次にそのマンガやサービスが何をするのかを考えて、最後に俳句みたいにリズムよく読めるように整えるといいんじゃない?』
ってコメントをもらいました。
こういった自分なりの方法論を見つけられると、量産できるようになりますね」
伊藤
「その話、考える前に聞きたかったな……」
麻生
「音がきれいという意味では、このキャッチとかいいかもしれませんね」
伊藤
「黒ギャル宣戦布告! 確かに、声に出したくなる!」
麻生
「韻を踏んでいるんですよね。ついつい頭の中で再生しちゃう感じです」
梅の選んだキャッチフレーズ
・三度の飯よりイッキ読み
・泣けるマンガも格好いいマンガもいきなり全話解放!
麻生
「最後に、副編集長にして『ケモノギガ』『GGWP!』『明日、私は誰かのカノジョ』などを担当する梅様の選んだキャッチフレーズ。基準としては『キャッチフレーズに続くアクションが想像できるかどうか』だそうです。今回の場合は『読む』って行動に繋がるかどうかがキモになってますね」
伊藤
「梅様、厳しいな……でも、俺としても自信のある二つが残ってると思う。納得だわ」
麻生
「他にも、『読み切れない!とまらない!イッキ読み!』なんかは惜しいですよね。『読み切れない!とまらない!さあ、イッキ読み!!!』みたいにして、行動を強調しても良かったかもしれませんね」
伊藤
「なるほど。結局、お客さんに『読んで』もらわないと意味がないもんね。他にも行動を招くキャッチってどういうのがあるの?」
麻生
「うーん。たとえばTSUYOSHIのこのバナーとかは、『行動』って意味でいいキャッチだったかもしれませんね」
伊藤
「これは……男子なら思わず納得しちゃうな」
うーん。キャッチは奥深い。でも、ちょっとずつわかってきた気がする。
麻生
「ということで、いろいろ見てきましたけど、編集部全員が選んだキャッチフレーズは……」
三度の飯よりイッキ読み
伊藤
「……よかった。一本だけあった」
麻生
「主語もはっきりしてるし、ビジュアル的にも良いし、音もいいし、その後の行動もはっきりしてる。正解のないキャッチフレーズの世界ですけど、一番正解に近いキャッチフレーズじゃないでしょうか?」
伊藤
「ほぼ完ぺきじゃない?」
麻生
「このレベルのキャッチフレーズを量産できると、名コピーライターになれるかもしれませんね。これなら石橋さんも認めてくれるかもしれません」
伊藤
「いやー。充実感あるわ。キャッチフレーズについても知れたし、一つレベルが上がった気がするなあ」
麻生
「確かに、伊藤さんの頑張りは素晴らしかったですね。……ところで伊藤さん、俺、伊藤さんとやってみたい企画があるんですよ」
伊藤
「え? どんな企画?」
麻生
「この企画がリベンジできたら、葛西さんの鼻を明かすこともできると思うんですよね……」
麻生はそう言って、スマホを取り出した。
伊藤
「麻生さん、これは……!」
麻生はドヤ顔で頷いた。
麻生
「今度こそアレを破壊したいんすよ。ファウルカップ」
To be continued…
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